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AUGRIM~医療と機械学習を正しく伝える

ICML2017特集 part2

前回に続き、今回もICMLで発表された論文をレビューします。

 

実際に、機械学習(or深層学習)と医療に関する発表は多数あり、その中で筆者が直接聞いて特に面白かったと思うものをご紹介します。

 

ICMLでは、論文が分野ごとに分けて発表されます。Health Careのセクションでは次の5本が発表されました。

 

1. H. Zhou 他, When can Multi-Site Datasets be Pooled for Regression? Hypothesis Tests, $\ell_2$-consistency and Neuroscience Applications

2. A. Alaa 他, Learning from Clinical Judgments: Semi-Markov-Modulated Marked Hawkes Processes for Risk Prognosis

3. J. Futoma 他, Learning to Detect Sepsis with a Multitask Gaussian Process RNN Classifier

4. W. Dempsey 他, iSurvive: An Interpretable, Event-time Prediction Model for mHealth

5. M. Zhao 他,  Learning Sleep Stages from Radio Signals: A Conditional Adversarial Architecture

 

個人的に新鮮に感じた発表は5番目の論文で、機械学習を使って睡眠のステージを予測する研究成果が報告されました。今回はこの論文で述べられていることをまとめてみます。以下の図はプレゼン資料や原論文に用いられていたものを使用しています。

Learning Sleep Stages from Radio Signals: A Conditional Adversarial Architecture - YouTube

 

よく知られているように、睡眠には幾つかの段階があります。

1. 起きている状態

2. 浅い眠り

3. 深い眠り

4. レム睡眠(急速眼球運動を伴う睡眠) 

そして、睡眠状態と脳の活動には密接な関係があるため、睡眠状態を知ることには意味があると考えられます。たとえば、深い眠りの状態は細胞の成長や筋肉の修正、記憶の定着などに本質的な役割を果たしています。

 

睡眠と脳の活動に関する研究は数多くありますが、この研究の新しさは脳の活動を直接調べるのではなく、被験者が眠っている見た目の様子そのものから、被験者がどの睡眠状態にいるかを予測しようとしています。

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従来の睡眠に関する研究では脳波を測定する機械を被験者の脳につけたり、被験者がMRIに入ったりして実験を行っていましたが、本研究では被験者は自然な状態でベッドに入ったままで、外部のWi-Fiのシグナルのみから睡眠状態を予測するモデルが作られました。

 

モデル

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この研究の優位性は、被験者が普段生活している家にあるベッドで実験が行えることでした。したがって、睡眠とは関係ない部屋の独自の特徴などのバックグラウンドに由来するノイズなどを取り除く必要があるため、Dという関数が用いられています。ここでxは被験者から得られたWi-Fiシグナルをインプットです。

 

データセット

25の異なるベッドルームにおいて、それぞれ100日間の睡眠データが使われました。

 

結果

脳波を直接観測することなく、Wi-Fiシグナルのみから睡眠状態が判別できるだろうかと疑問に感じるわけですが、実際にかなり高い精度が得られることがわかりました。

 

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上の図は同一人物の同時刻での睡眠状態を表したデータです。図の上段は測定器を着けた状態での測定結果、下段は論文で提示されたモデルによる予測結果を表しています。91.2%も整合することがわかりました。また、予測結果が最も悪い場合でも、71.2%の整合性が得られたと報告されています。平均は80.4%だそうです。

 

結論

睡眠状態をモニタリングする際に、従来まで行われてきたような測定器を体に取り付ける方法以外に、単に被験者の体から跳ね返ってくるWi-Fiシグナルを観測するだけで、睡眠状態が高い精度で予測可能であることが示されました。

 

このような、直接脳波を観測することなく、脳の状態を予測する研究は今後ますます重要性が高まってくることが期待されます。特に、脳科学人工知能という学術的観点からも非常に興味深いです。

 

弊社AUGRIMではこのような観点に基づいても研究を行っています。興味を持たれた方はご連絡ください。