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AUGRIM~医療と機械学習を正しく伝える

ところで、人工知能とは? ~Deeper Mindを目指して~

The Imitation Game

空前絶後の"人工知能"ブーム”が訪れている現在では、プログラミングに関する特別の知識がなくても、本やwebサイトに書かれてあることを真似 (Imitate) すれば、誰しもが簡単なAIを作れる時代になりました。

 

実際にプログラムを作成して、初めて画像認識や自動翻訳などを体験したときは純粋に驚くばかりです。それと同時に、この人工知能ブームに影響された多くの方々は、”これは本当に人工知能と言えるモノなのか?”という疑問を持っているはずです。"人工"であることは疑いようがないので、疑問は”コンピュータは知能を獲得したのか?”ということでしょう。

 

現代人とほとんど同じ疑問を持った人物が70年前にもいます。

 

コンピュータの概念を生み出したAlan Mathieson Turing (以下、チューリング)は”機械は思考できるか?”という問に対する論文を1950年に出版しました。チューリングはコンピュータを使って暗号解読に取り組んだことでも知られ、映画にもなっています。

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この論文では”機械がどのように振る舞えば、思考しているとみなせるか?”という問に置き換え、"思考とは何か"が論じられています。

 

部屋に男性(A)、女性(B)がいて、別の部屋から第3者(C)がリモートでこの2人に質問するとします。ここで、仮に、実はコンピュータがAの役割を演じたとき、CはAがコンピュータであることを見抜けるか?というのが、チューリングが用意したテストです。コンピュータにとっては、自分がコンピュータであることを気づかれないために、可能な限り人間Aの言動を真似をし、あたかもAが答えているように答えることが、テスト対策だとチューリングは考えました。

 

そして、コンピュータがAを演じていることをCに悟られなければ、コンピュータは思考しているとみなせるだろうとチューリングは提案しています。このテストはチューリングテストと呼ばれています。

 

 

Learning Machines

同じ論文の最後の章でチューリングは現在の機械学習に相当する枠組みを提案しています。彼は、機械が人間を真似するために、学習が必要だと考えたわけです。

(a) 初期状態

(b) 教育を与える

(c) 教育以外の別の経験をさせる

驚くべきことに、これら3つは、現在の機械学習では教師あり学習と呼ばれる学習プロセスと全く同じであることに気づきます。もう少し丁寧に説明すれば、

(A)何もデータが与えられていない状態

(B)データを読み込み、学習する

(C)与えられたデータ以外でも対応できるようにする。(過学習を防ぐ)

というのが、現在の教師あり学習です。

 

そして今

自動応答ロボットや、SNSのチャットボットなど、人間の会話を模倣するAIは既に存在するので、チューリングテストに合格可能という意味において、コンピュータは思考能力を有しているのが、現在のAIです。更に、深層学習や強化学習など、チューリングが思い描いていた以上のことが実現しています。従って、もしチューリングが現代にいれば、我々は既に思考する機械を手に入れた、素晴らしい人類だと驚くかもしれませんね。

 

Beyond

ところで、果たしてこれで満足できるかというのが、次の問題です。まず、チューリングテストの合否は結果のみで判断されることに気づきます。コンピュータが人になり済ませられたかどうか、それだけが思考を有しているかどうかの判断基準でした。70年も昔の考え方なので、このような具合のテストで良いのかもしれませんが、現代においては、人間も多角的に評価しようという風潮ですので、機械の思考能力も多角的に判断すべきでしょう。

 

思考にはレベルがあります。チューリングテストでは思考能力の有無を判断するだけでしたが、今後は高い思考力を有するコンピュータを実現するにはどうすればよいかという疑問が生まれます。

 

そこで、次の問を考えてみましょう。

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を同時に満たす(x,y)の値を求めよ。答えは(x, y)=(2,1)ですが、いま関心があるのは、この問題をどのように解くかです。たくさん解法はありますが、代表的なものは

 

(1) (x,y)に思いつく限り値を代入してみる。

(2)第1式から、第2式を2倍したものを引き、まずはxの値を求める。その後、xを代入してyを求める。

(3)行列を使って解く。

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(4)数値計算ソフトを利用する。

 

解法(1)は誰でもできる、最も簡単だけれども、問題によっては解決までの時間がかかる方法です。

解法(2)は中学校で習う、連立方程式の定石的な解法です。

解法(3)は高校あるいは大学で習う、行列を使った解法です。

解法(4)では算数や数学を知らなくても、パソコンの知識があれば解を求められます。

 

もうお気付きの通り、これら4つの方法を扱うには求められる技術も、予備知識も大きく異なり、思考力のレベルに差が見られます。現代の機械学習だと、解法(1)に習熟した学習モデルが、ある日突然、解法(2)を思いつくなどということは絶対に有り得ないわけですが、人間であれば可能です。さらに、人間であれば、一度数学の知識を手にしてしまえば、(3)の解法を思いつくのはほとんど苦労しませんが、少なくとも現在の機械学習だと(1)から(3)に行くことは不可能です。

 

この例に限らず、人間の場合は仮に他人から習わなくても、より良い解法を考えつくことはごく普通にありますが、コンピュータでは実現できていません。ここに、人間が漠然と抱く、”思考”という概念と、チューリングテストに合格した機械にとっての"思考"に大きなギャップが見られます。

 

今後の目標は、より高い知能レベルの獲得を目指すことがポイントで、問題が与えられたときに、適切な解法を提示できる人工知能が欲しいところです。

 

数年後、仮に人工知能ブームが過ぎ去っても、思考レベルの高い機械の実現と、社会へのより良い貢献を目指して、弊社AUGRIMはさらに研究、開発を進めて参ります。弊社の技術は医療のみならず、様々な分野で利用されています。

 

共同研究、製品開発の受注などは随時承っておりますので、お気軽にご連絡ください。